「NURSE」というコミュニケーションのプロセスがあることをご存知でしょうか?
がん医療におけるコミュニケーションスキルというと、「SPIKES(スパイクス)」が有名です。
ですが、こちらは診療におけるコミュニケーション方法であり、看護師には当てはまらないことも多いのです。
そこで、看護協会が発信しているものが「NURSE」になります。
※日本看護協会監修、国立がん研究センター東病院看護部編集「患者の感情表出を促すNURSEを用いたコミュニケーション看護師のスキル」引用・参考
どのような方法かをみてみましょう。
NURSE(ナース)
NURSEは、患者の感情表現を促進するコミュニケーションスキルです。
ただ、漠然と共感したり、寄り添うというだけでなく、「意図的に聴く」ことができるようにします。
NURSEの定義
N | Naming 命名 | 患者から表出された感情に名前をつけ、受け入れていることを表明する 患者の話をよく聴いており、感情を適切に認識したというメッセージを送る |
U | Understanding 理解 | 患者が話す感情的な反応について、医療者がそのことは理解できると表明する 患者の感情は正当化され、受け入れられ、妥当なものとされる |
R | Respecting 承認 | 患者の感情に尊敬の意を表す 1つの感情に特化するのではなく、その思いや行動を心から承認する |
S | Supporting 支持 | 患者の状況に理解を示し、支援するための意欲とともに、協力して問題に向かおうと思っていることを表明する |
E | Exploring 探索 | 患者に起こっている状況を整理し、それが患者にとってどのような意味を持つのかを明確にしていく |
それぞれ説明していきましょう。
N(Naming)命名
- 感情に名前を付ける
- 「あなたはがんになったかもしれないと心配しているように聞こえます」
- 感情を要約、受け入れの表明をしている
- 医療者が患者に関心を持っている言葉から、非言語的な手掛かりをつかむ
- 医療者自身の気持ちの表明や示唆を入れない
- 「この状況で悲しむ人はたくさんおられます」のような表現が望ましい
- 自分の感情を他人に表現されることは、多くの人は好まない
- 命名のもたらす効果
- 患者の言うことを良く聴いていて、感情を適切に認識したというメッセージになる
- 患者は改めて自分の感情を客観的に捉え、自分の感情に気付く
- 患者が自分自身の感情に向き合うことにつながる
U(Understanding)理解
- 理解と正当化
- 医療者が返答する表現が、偽りのない本音であることが必要
- 医療者が患者の感情を理解できるまで確認、傾聴、沈黙を駆使して、患者の真意が表出されるまで、良く聴くことが重要
- 自分の解釈と理解を言葉にする
- 「私は同じような体験をしてませんが、どれだけつらいかと察することはできました」など自分自身の理解を言葉にする
- 患者は、自分の感情は妥当なもので、理解してもらえたと認識し、さらに深い感情を話しても良いのだと認識するようになり、関係性が深まっていく
- 自分自身の経験に照らし合わせる
- 患者の話をよく聴くことに加え、その感情の原因となった特定の出来事についての経験を十分に持っていることが望ましい
- しかし、その感情を想像して理解を示したり、想像できなかったことを素直に伝える表現も有効
- 医療者の表明する「理解」
- 患者の理解度の状況などを確認し、正しい知識を持っていることを確認
- 患者自身に起こっていることを繰り返し確認することで明確化
- 表出した感情に対する医療者の理解
- 以上のプロセスから言葉だけの理解ではないことに注目
R(Respecting)承認
- 言語的尊敬の表現の重要性
- 尊敬の表現は、患者にとっての出来事がどんなに困難だったかを示したり、患者の努力を称賛したりすること
- 敬意を示すための効果的な方法であり、その力を強化することにもつながる
- 「今はとてもつらい時を過ごしていることがわかりますよ」
- 言葉の乱用は逆効果
- やみくもに言葉だけを乱用しては逆効果
- 患者の行動や対処を真に尊敬できると感じた場合のみに使うべき
- 患者の言葉と同時に、医療者自身の感情にも意識を向ける
- 医療者自身が感じる強い感情は、患者にとって一番適した、一番強い尊敬・称賛のメッセージになる
S(Supporting)支持
- できる限りの支援を表明する
- 状態が悪くなってきた患者の多くは、医療者から見放されることを恐れる
- できる限りの支援をすることや、患者の側にいるということを表明
- 伝えるタイミングの注意点
- 患者のもとを離れる際のしめの言葉として使用されることがある
- これは、信頼できると思って深い気持ちを語ろうとしているときに、一気に扉を閉められたと感じる
- 本当に患者の感情に対するこちらの意思が表明できたのかを、十分に吟味して使用すべき技法である
E(Exploring)探索
- 患者がどのような特定の感情を持ったかに着目する
- 医療者の憶測の感情を当てはめないように注意する
- 意図的に感情表出を誘導する
- 「どのような意味でおっしゃいましたか?」
- 間接的な探索の技法
- 感情表現は必ずしも直接的な探索により引き出されるとは限らない
- 医療者自身が経験した「混乱」「不幸」「失意」などの感情を表明すると、患者自身の感情に目を向けるきっかけとなる
- 感情だけでなく、今の話題の状況がどんな影響を与えたかなどの問いは、具体的な状況から感情を表出しやすい
- 何が問題か、どのようにこの状況になったかを問うことも感情表出しやすい
- 患者中心の面接
- 患者から表出されていないことについて確認や提示をすることは、患者中心ではないため避けるべき
- 感情の話題に入ってきている段階で、身体的な会話に転換することも望ましくない
- 他の話題に流れてしまった場合は、もう少し聞きたいと話題を戻すことは良い
以上のような内容です。
参考にした文献は、「コミュニケーションの実際」として、事例も記載されているので、
興味のある方はぜひ読んでみてください。
今回は以上です。
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