会社に属する以上、どんな職場でも、人間関係の問題は離せない問題です。
同僚との関係性によっては、モチベーションの低下や離職につながることも多くあります。
多くの場合、コミュニケーションエラーや意見の食い違いで、関係性の不一致が起こり、これがストレスの原因となります。
ですが、どんな人でも付き合い方や、自分の立ち位置を変えることで変化していきます。
自分が変わると周囲も変わる
ここでは、社会での人間関係の築き方に始まり、男性看護師からみた看護師の世界と、女性社会について紹介し、どのように立ち回るべきかを伝えていきます。
これは人生論のようなもので、生きやすくするための方法の一つです。
周囲など気にせずに、自分の道を歩ける強さを身に付けることが、楽に過ごせる秘訣なのです。
自分が属する社会での傾向と対策を知り、自分がどのような立場に置かれるのかを予測しておくことで、対応できることも多いのです。
社会での人間関係とは
現代はネット社会で、コロナ渦の影響で在宅ワークという働き方も通常となりつつあります。
学校や会社など外の世界へ行かなくても、他者との関わりをもつことができるようになりました。
ですが心理学的な観点からみると、人間関係は単なる物理的な接触以上のもので、感情的な繋がりや相互作用がある複雑な構造を持っています。
看護師の人間関係における一般的な悩み
現場で良くみられる人間関係の悩みは、先輩・上司の存在です。
一般的には、看護師3-5年目の間に、自身の看護観の形成が成され、自分の看護のやり方が身についてきます。
その頃に新人指導に当てられる病院が多いので、その先輩が看護観を形成するに至った環境などによって、後輩に対してきつく当たったり、能力以上のことを求めたりすることで、トラブルとなることがあります。
稀ではありますが、上司との関係性がこじれる場合もあります。
上司が部下の意見をしっかりと聞き、意見を尊重して対応できていないと、不満という形でトラブルが起こる場合があります。
発展すると職場への批判となってしまう場合もあります。
看護師の人間関係を円滑にするためのポイント
先輩・上司に当たる人が注意しなければならないポイント
- 相手の長所を見つけるようにする
- 相手に興味をもつ
- 感謝の気持ちを伝える
- 見返りを求めない
本人が注意するポイント
- 分からないことを明確に伝える
- 積極的に意見を求める
- 態度や表情にも注意して、関心を伝える
- 主張を強く伝えすぎず、柔軟に対応する
- 感謝の気持ちを伝える
先輩・上司がコミュニケーションで意識する具体例
まずは自分の立場を知りましょう。
相手にとって自分は仕事上では上の立場です。
相手が話しやすい雰囲気を作る必要があります。
そして相手の考えを聞く姿勢を作りましょう。
「この患者さん、私は○○と思うけど、あなたはどう思った?」
「さっき○○していたけど、私なら○○のようにするんだけど、どう思う?」
など、相手がどのように考えているのかを言葉にできる促し方も必要です。
そして、相手が自分のできることを探して間違ったことをしてしまっても、まず責めるのではなく、
「私が○○できなかったから、やろうとしてくれたんだよね。ありがとう。」
と感謝の気持ちを伝えると、相手も失敗してしまった自分を見つめ直すことになります。
相手を育てるという使命感から試行錯誤して関わろうとしていることでしょう。
その気持ち・姿勢に応えてくれないことも多々経験するでしょう。
ですが、そこまでの気持ちをもってしても、受け取らない相手がいることもあります。
過度に相手に期待しないように、自分がやっていることに自信が持てるようにすることも大切です。
本人がコミュニケーションで意識する具体例
自分は教えてもらう立場です。
「自分が分からないことは、相手も分からない時があったはずだから分かってくれるはずだ」という思考を少なからず持っていることがあります。
自分から伝えないと相手には正しく伝わりません。
自分の言葉で伝えられる努力をしましょう。
「多分こうだろう」「こっちの方が効率がいい」という思考は、経験が浅いと危険です。
本当は○○と間違える可能性があるから○○としている、というルールがあります。
自分から積極的に、「○○で間違いないですか?」「○○しようと思いますが○○で良いですか?」と、自分の行動を報告することも必要です。
まずは職場のルールを覚えてから、自分の意見を伝えるようにしましょう。
聞いていることを態度で示すことも大切です。
その姿勢だけで相手の態度も変わります。
そして自分へ時間と労力を割いてくれていることに対して、必ず感謝の気持ちを伝えましょう。
看護師はなぜ女性社会なのか

男女雇用機会均等法が背景にあり、保健師助産師看護婦法が改定され保健師助産師看護師法と変更され、2002年3月1日から「看護婦」から「看護師」に名称変更されています。
それまで女性は看護婦、男性は看護士と呼称されていました。
このような背景から、看護師は女性が多く占めています。
以前より看護士とよばれた男性もいましたが、精神科や手術室など、極力女性患者に関わりのない場所で働いていました。
現在では、各病棟に1人以上は配属されていることが多くなり、入院患者から、「男性は珍しい」という声が少なくなってきています。
とはいえ、婦人科・産婦人科など女性特有の領域では、男性看護師は受け入れづらくなっています。
男性看護師のメリット
女性社会であった背景から、少なからずジェンダーによる差別意識も残っています。
ですが、悪い面ばかりではなく良い面もたくさんあります。
- 患者さん・スタッフから覚えてもらいやすい
- 婦人科など女性特有の領域もあるように、泌尿器科など男性特有の領域では、患者も同性同士の方が話しやすいこともある
- 出産・育児など、ライフイベントで退職することは少ない
- 一つの職場に長く勤める傾向にあるので、管理的な立場で働きやすい
- 人間派閥に属することが少なく、フラットな立場で働ける
- 未だに女性を卑下する高齢者がいるが、男性は医師と間違われるので、患者さんから高圧的な態度を取られにくい
男性看護師であるデメリット
男性だから、というデメリットは多くありませんが、強いて挙げると以下になります
- 気を遣って意見が言いにくいが、意見を求められやすい
- 女性の職場としては高給だったためか、一般社会と比べると昇給率が低い
- 育児のために夜勤免除や時短勤務の対応をしてもらいやすが、金銭的には非現実的
- 男性患者からの女性拒否はないが、女性患者からの男性拒否はある。医師は異性で良くても看護師は難しい
男性看護師がなぜ女性社会に入るのか
例えば、レスキュー隊員や医師・警官など、男性社会に身を置く女性がいるように、女性社会に身を置く男性がいても不思議ではありません。
ただ老若男女問わず、歴史的にも「看護婦」というイメージがついているためか、男性に身体的なケアをされることに抵抗を感じる人は多いです。
「女性社会に敢えて飛び込んだ」というよりも、職業を好きになって入る方が多いと思います。
だから辞めない人が多いという理由もあるでしょう。
- 人が好き
- 人の役に立ちたい
- 医療の現場で、患者さんと直接関わりたい
- 医師になれないけど、医行為に携わりながら働きたい
これらは看護師でなくとも、理学療法士や薬剤師、救命救急士などでも叶えられますが、
- 女性社会に抵抗を感じない
- 患者さんの人生そのものに深く関わりたい
- その人の生活のお世話がしたい
- 病気の全般的な知識から、その人の生活に及ぼす影響について考えていきたい
- 家族と共に支える存在でいたい
患者さんの最期の時まで側にいれるのは、医師と家族と看護師です。
その人の人生に寄り添う、またその人生の経過を看れる職業は他にはありません。
支えることの限界点がない分、正解のないのが看護です。
この魅力を知れば、とてもやりがいのある職業だと思います。
看護師界の職場環境の実際

看護師の職場環境はどのようなものか、どの職業でも実際に働かないと分からないものです。
ただ医療業界というのは、特殊な環境であるため、一般的に接することのない職場です。
想像しにくい場所であるため、特別な意識があるものですが、職場環境は一般企業と大きな相違はないと考えています。
筆者は幼少の頃より入院が多かったためか、一番近くにいる職業の人でした。
その頃から看護師になりたいという気持ちはありませんでしたが、医療職に就きたいと漠然とした思いは持っていました。
看護師の業務内容
巷では3Kとよばれる仕事として知られています。
「きつい」「汚い」「危険」の頭文字をとった言葉ですが、各職場での待遇改善が図られていますので、言葉通りの現状ではありません。
近年では新3Kとして、上記に加えて、「帰れない」「厳しい」「給料が安い」という言葉も出てきています。
当てはまるといえばそうですが、それ以上のメリットもあります。
実際の業務内容を挙げていきます。
- 体温・血圧・脈拍・呼吸などの生命兆候(バイタルサイン)の定期的な測定
- 身体拭きや排泄介助、洗髪、口腔ケアなどの日常の清潔行動の介助
- 測定や観察から得られた情報のアセスメント記録
- 入退院に伴う事務処理
- 患者さんの状況に必要な心理的ケア
- 患者さんの治療予定を確実にこなせるようなサポート
- 各種委員会や会議への出席
- 経験年数に応じた教育プログラムの受講や育成
と多岐に渡りますが、看護助手や介護福祉士などを導入し、業務分担が成されていることも多く、事務処理や会話が主な業務に編成されつつあります。
排泄介助や認知症対応などは、業務の一部に過ぎないのです。
看護師は忙しいのか
よく他者からは、「看護師は忙しい」という評価をいただきます。
これも目にする機会がないため、忙しそうに見えるが正解だと思います。
例えば飲食店にピーク時間があり、混雑する時間があり忙しいです。
一般職でも、自分が抱える案件が溜まっている時は忙しいです。
このようなタスク管理はどこの職場も一緒です。
看護師のタスク管理を次に挙げます。
- 多重業務が多い(ナースコール対応)
- 常に優先度の変更を求められ、器用さが求められる
- 患者さんの状態の変化に伴い、予定外の検査や治療が実施される
- 患者さんの状態安定が優先されるため、各種ケアが後回しになりがち
- 各委員会や会議などでの宿題が多く、時間外にこなすことがほとんど
この中で、患者さんへどのようなケアがしたいのかは、看護師個人の見解の違いです。
必ず期待に応えようとするのか、別の人に引き継いでしてもらうのか、または了解を得て予定を変更してしまうのか。
色んな方法をとって、タスクをこなしていくので、個人の見解の違いによる対立もあります。
よってどこのラインを忙しいとするのかも個人の見解の違いということになります。
このように一概には言えないのですが、常にタスクが多いわけではありません。
患者さんの数や検査の数、入院患者の状態によって大きく変化します。
その時間をどのように使っていくかの違いで、忙しさも大きく異なるのです。
人の死に立ち会うということ
先ほど看護師として特殊な場面として、「死に立ち会う」ことを挙げました。
これは病院や在宅で看護師をする人は避けて通れない場面です。
そして何度立ち会っても慣れるものであってはならないですが、つら過ぎて耐えれないのでは仕事として成立しなくなります。
このように考えましょう。
その方は入院するまでどのような生活をされていたか情報収集し、その方の人となりを知ります。
そして、その方の人生に敬意を表し、看護師ができる最大限のお手伝いを考えます。
家族とともに人生を労い、思いを馳せることが必要です。
そのように対応できると、それが自分の看護の信念へと変わっていきます。
そして、どのような看護師人生を送っていくか、立ち会う度に考えていくことで、自分の人間性の向上にもつながっていくのです。
筆者はこのような場面に立ち会うことを「命の講義」と受け止めています。
仕事でのストレスへの対応
人と関わる以上、ストレスは付きものです。
このストレスを大きく捉えてしまうか、対処可能なストレスと捉えられるかは、ご自身の考え方次第でコントロールすることができます。
これをコーピングとよびます。
このコーピングを高める方法として、心理学ではマインドフルネスや認知行動療法を勧められます。
今必要と思わなくとも、様々な対処方法を知っておくことは、長い人生のどこかに活きてきます。
周囲を変えるエネルギーよりも、自分の見方を変える方が労力は少なく済みます。
マインドフルネス
日常的に取り入れられる行いやすい方法です。
多くの著名人も実践しており、効果は保証されていますが、正しい方法で実践しなければなりません。
現在の瞬間に意識を集中し、思考や感情、身体の感覚を判断せずにそのまま受け入れます。
ストレス軽減や感情の安定、集中力の向上など、心身の健康に多くのメリットがあります。
- 現在の瞬間に集中する
呼吸、身体の感覚、歩く動作、食事などの自然な行動の一つに集中します。
意識的にその行動だけを行うことだけを遂行します。 - 浮かんでくる思考に対して判断をしない
思考や感情が浮かんでも、それに対しての良い悪いの評価をせず、ただ観察します。
自分がそのような思考や感情を持っているという事実だけを認識するのです。
意識は常に行っている一つの行動に戻します。 - 受容と無抵抗
出てくる感情や思考をそのまま受け入れ、抵抗せずに観察します。
例えば、ストレスや不安を感じた時には、「今、不安を感じている」と受け入れることです。
マインドフルネスの効果
- 現在に集中することで、過去や未来に対する不安を減らすことができる
- 思考や感情を受け入れることで、冷静な対処が可能になる
- 集中する練習になるため、集中力の向上になる
- 他人の感情や言動に対しても、冷静で共感的な反応ができるようになり、対人関係が改善する
認知行動療法
思考、感情、行動の関係に焦点を当てた心理療法です。
ネガティブな思考や行動パターンを、現実的で建設的な思考に変えていく手法です。
これは専門家とともに行った方が、間違った思考に陥らないようリードしてもらえるので、個人で行う場合は、マインドフルネスで自らの感情と向き合う方がよいでしょう。
その上でポジティブな感情や思考に切り替えることで対処していきます。
この思考過程はコーピング能力を高めることにもつながります。
まとめ
看護師だから特別な人間関係を構築しなければならないということはありません。
今までの学生生活や社会人経験が基となる人間性の構築を、引き続き違う現場で行うだけです。
ですが、近年の社会環境は複雑化しているため、人間関係も複雑になり、色んな思考ができています。
そういう面でいえば、多くの他者と関わる医療職は、明らかなコミュニケーション障害を起こすのは少ないのではないでしょうか。
他者を評価するより、自分自身のコーピング能力を高める方が幸せに生きられると思います。
深く悩まずに、誰が悪いと責めずに、環境を見直すことで解決できることもあるかもしれませんよ。
それでもつらい時には、我慢せずに他者を頼りましょう。
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