がんの治療というと、「しんどい」「痛い」「寝たきり」などのイメージがあるでしょう。
まずはそんなイメージを変えていけるように説明していきます。

がんの治療なんて、とってもしんどいって言うじゃない?
私には耐えられないと思うの…
なったものは仕方ないって思うしかないかしらね…

皆さんが思うようなイメージとは少し違うと思いますよ。
確かにつらくなる治療もありますが、
なすえさんのイメージはドラマのような印象ではないですか?
ドラマとかは見る人を惹きつけるために作っているものです。
必ずしもそんな治療ばかりじゃないんですよ。

そうなのかしら…
でも私はあんまりつらい思いしてまで治療したくないわ。
怖いもの…

多くの方が同じように思われると思います。
実は色んな方法があって、その人に一番最適な治療を選べるんです。
もちろん医師から全ての情報が提案されます。
まずはどんな治療があるのか知ってみましょう。
なすえさんのような方は、本当に多いのです。
どんな病気でも「治療をする」ことで、今よりつらい状態にならないようにするのです。
がんの場合は昔から「怖い」イメージが先行してしまっていますが、
昔と今とでは改善してきている部分がたくさんあります。
知らないからこそ怖いのであって、知ることによって払拭できる不安もあります。
ここで、一緒に学んでいきましょう。
治療方法はなにがある?
がんの治療というと何を思い浮かべるでしょうか?
一番に出てくるのは「抗がん剤」ではないでしょうか?
髪が抜けて、食べれず吐いて、ずっとベッドの上…
こんなイメージだと、誰も治療を頑張ろうとは思えないですよね。
大きくは、「手術療法」「化学療法(抗がん剤)」「放射線療法」があり、
これらを組み合わせて治療を進めていくことになります。
手術療法
がんを目で見て、直接取ってしまう方法です。
一番確実で効果のある方法になります。
手術も切って貼ってばかりではなく、極力負担の少ない方法が選ばれるようになっています。
開腹手術
メスで切って、身体の中の病巣を取り除きます。
一般的な方法で、術後の痛みが心配になるでしょう。
現在は「痛みを我慢して動く」ということは極力避けていて、
「痛みを抑えながら術後早期に動く」というのが基本的な考えです。
腹腔鏡下手術
カメラやハサミなどのアームを身体の中に入れるだけの穴を作って、
病巣を取り除きます。
開腹手術に比べて傷が小さく、身体への負担が少ないので、回復が早い方法です。
できる限りこの方法を取られますが、
手術の視野が小さいため、適応となる状態か判断されることになります。
ロボット支援下腹腔鏡下手術
腹腔鏡下手術と同じ要領で、ロボット(DaVinci)を使用して手術を行います。
手で行うより精密な手術ができ、病巣をより正確にきれいに取ることができます。
ですが、手技が可能な医師と設備が整った施設でないと行えないのが欠点です。
内視鏡下手術
胃カメラ、大腸カメラと同じ要領で、内視鏡で病巣を取り除きます。
一番負担のない方法ですが、早期のがんにしか適応はありません。
化学療法(抗がん剤)
点滴または内服でがんの撲滅を目指します。
大きな目的は、
①目に見えない転移の可能性を潰す、②がんの消滅を目指しながら縮小・維持を図る、ことです。
抗がん剤はたくさんの種類があります。
それぞれの薬を組み合わせて使用することで、効果を増強させていきます。
使用する薬によって副作用は大きく異なります。
殺細胞性薬剤
よく知られる一般的な抗がん剤です。
全身に影響があり、正常な細胞もがん細胞も影響を受けます。
髪が抜けるものも抜けにくいものもあります。
吐き気は一緒に使用する補助薬で、随分と抑えられるようになってきています。
分子標的治療薬
ターゲットセラピーと言われるようになった抗がん剤です。
がんだけを狙うように攻撃をします。
全身に影響がない分、比較的副作用が少ないと言われていましたが、
正常細胞にもターゲットとなるマーカーが発現しているため、多様な副作用があります。
副作用に対する処置を併用しながら治療を継続していきます。
免疫チェックポイント阻害薬
オプジーボで有名になった免疫療法です。
がんは正常な人でも発生しており、自己の免疫機能で消滅しています。
その自己免疫が正常に働かなくなったために、がんが発症してしまいます。
働かなくなった自己免疫を正常化し、がんを攻撃する力を回復することが目的です。
しかし、免疫機能に影響を与えるため身体への影響は大きいものになります。
今まで不可能だったがんの治癒が望めることもありますが、
副作用は難治性の場合が多く、ステロイド治療が主体になります。
放射線療法
放射線を当てて、その部分のがんを死滅させます。
手術と同様の効果が得られますが、再発した場合など同じ場所に当てられないデメリットがあります。
また手術に制約が出たり、サイズが大きい場合は適応外のこともあります。
内部照射と外部照射があり、レントゲンのような当て方が外部照射にあたります。
大きくは、電磁放射線(電磁波)と粒子放射線(粒子線)に分けられます。
電磁波 | X線、r線 |
粒子線 | α線、β線、電子線、陽子線、炭素線、重粒子線、中性子線 |
Gy(グレイ) | 放射線が物質にあたった時にどれくらいのエネルギーが吸収されたかを表す |
Sv(シーベルト) | 放射線が人間にあたった時にどれだけ健康被害があるかを評価するために使う |
Bq(ベクレル) | 放射能の量を表す |
外部照射
身体の表面近くで線量が最大となり、それ以降は体内に進むことによって徐々に減少します。
そのため、一方向から当てると、
がんより浅いところにある正常細胞が大きなダメージを与えることになります。
よって、多方向から弱い線量をがんに向けて当てることで正常細胞へのダメージを減らします。
一般的な高エネルギー放射線治療
電子線やX戦をリニアックという装置を使って、多方向から照射します。
病状や治療目的によって、方法や回数は異なります。
通常は平日の5日間を数週間かけて実施します。
3D-CRT(三次元原体照射)
最初にCT、MRI、PET-CTなどの画像と、専用コンピューターを使って、
がんの大きさや形、部位を特定し、がんと周りの組織を立体的に再現します。
その上で、装置を回転させながら、がんに合わせて正確に照射します。
IMRT(強度変調放射線治療)
専用コンピューターで管理しながら、がんには高い放射線量を、
正常組織には低い放射線量を調整できるようにしています。
IMRTを回転させながら行うVMAT(強度変調回転放射線治療)という方法もあります。
SRT(定位放射線治療)
多方向から放射線を集中させる方法で、
定位放射線、ピンポイント照射ともいいます。
通常の放射線治療より正常組織にあたる線量を減少させることができます。
粒子線治療(陽子線・重粒子線)
X線に比べてがんに合わせて放射線をより集中できます。
X線は身体の表面が一番線量が高いのですが、
粒子線は目的の場所に到達する直前に大きな線量を与えられます。
これをブラックピークと呼び、この深さや幅を調節して正常組織への線量を減少させます。
先進医療と保健適応のある治療方法と別れますので、注意が必要です。
IGRT(画像誘導放射線治療)
放射線をより正確に照射するための補助技術です。
正確な位置合わせを行うために、病巣の内部または近くに金製のマーカーを埋め込む場合もあります。
内部照射
身体の中から放射性物質が放散されるような治療法です。
カテーテルや針などを腫瘍に直接当たるように配置し、放射線を当てたり、
経口薬や静脈注射によって、放射性物質を体内に取り込む方法もあります。
他にも、重粒子線や陽子線治療もありますが、保健適応となる疾患が限られています。
ネットには色んな情報がある
現代は調べようと思ったら、Google先生に聞けばなんでも出てきます。
しかし、正しい情報ばかりではなく、様々な情報が錯綜しています。
特にがん治療の場合、他に何か方法がないのか、と様々な方法を模索される方がほとんどです。
保険適応外、自費診療というのは、確立した効果が示されていない治療方法になります。
「標準治療」と呼ばれるものが保険適応となり、効果が保証された標準の治療方法です。
ここを間違えないようにしていただきたいと思います。
今回は以上です。
【引用・参考】
がん情報サービス HOME:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)
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